スパルタ指導の弊害―理不尽な体罰がもたらした選手の生死にかかわる事故―【高校サッカー勝利学】

「勝利にこだわることで心を鍛える」。流通経済大学付属柏高等学校で、多くのプロ選手を育ててきた本田裕一郎監督の言葉を紹介していきます。

本田裕一郎 Edit by 元川悦子| Photo by

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■多すぎた理不尽な走り、理不尽な説教、理不尽な練習

 私自身はスパルタ指導の弊害のほうが多かったと、大いに反省しています。

 殴ったり蹴ったりすれば、子どもたちは委縮してしまいます。自分の意思を出せなくなる。自己主張をなくし、才能の芽を摘んでしまうんです。選手たちは喋らなくなり、何でも「はい」と言うようになります。私の発言が間違っていても「はい」。

 黒いものを白といっても「はい」。試合に負けた後に「お前ら、これから400本ダッシュだ」と言ったことがありましたが、絶対にできるわけがないのに、選手たちは「はい」と返事していたくらいです。

「だって」「でも」「だから」と口答えするだけで、ボコボコに殴るようにして鍛えていたがために、完全に「指示待ち人間」を作ってしまったと思います。

「やらされている」という意識を強くして、サッカーを嫌いにさせてしまうという問題点もありました。いい選手を育てるためには、サッカーをもっともっと好きにさせないといけないのに、私は全く逆のことを選手たちにしていたのです。それは大きな失敗だと痛感しています。

 理不尽な走り、理不尽な説教、理不尽な練習も多すぎました。ただ、長時間の練習は今も必要だと思っています。「1時間半や2時間しか集中力が続かない」というのは違う。

 もし集中力が続かないのなら、20分、30分と小刻みにして休みを入れ、量をこなせばいいだけです。選手にだって意地がありますから、ある程度の量には耐えられる。量と質が伴ったトレーニングがベストなのです。

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