[高校サッカー 心を揺さぶる物語]いつも親父がいてくれた <後篇>

[高校サッカー 心を揺さぶる物語]全国で本当にあった涙の青春ストーリーの後篇を紹介します

監修・執筆 安藤隆人| Photo by Editor|シリーズ:[高校サッカー 心を揺さぶる物語]

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■開会式の日にかかってきた緊急電話

サッカーボール

 迎えた12月30日、選手権開会式。
 僕はチームのみんなと国立競技場で入場行進をした。自分の手でつかみ取ったユニフォームを身につけての行進に気分は高揚した。

 いよいよ戦いが始まる。

 この場所でサッカーがしたい。スタメンに入ってプレーしたい。
 強くそう思った。
 
 開会式が終わり宿舎で明日の初戦に備えていると、突然僕の携帯電話が鳴り出した。
 叔父からだった。

「今すぐ病院に来い! 今夜が峠になるかもしれない」

 僕はこういう連絡をもらったら慌てふためくかと思っていたけど、意外にも冷静だった。

「いや、病院には行かない。俺、親父と約束したんだ。だから行かない」
 
 大会に入る前、僕は親父に「選手権に入ったら、チームのために戦おうと思っている。だから、たとえそのとき死んでも会いに行けないからな」と伝えていた。

 親父はジッと僕を見つめ、「別に来る必要はねえ。お前が努力して勝ちとったんだ。試合に出ることを、チームのことを、優先しろ」と返してきた。

 もちろん僕は25番目の選手。試合出場は難しいかもしれない。
 だけどチームをサポートすることはできるし、もしたった1パーセントでも試合に出られる可能性があるなら、それに賭けたいと思った。
 
 僕はチームの全体ミーティングに参加した。
 ミーティングが終わった後、僕は角谷監督に相談した。

「明日の試合で胸や肩につける、黒い喪章のようなものはありますか?」

「どうした? お前、もしかして……」

「実はもうすぐ親父は死んでしまうかもしれないんです。もし死んだら、僕だけでも喪章をつけたいんです」

「お前、自分が何を言っているのかわかっているのか!? 今すぐ一緒に病院に行くぞ!」

「いや、僕は行きません。親父と約束したので。今僕がチームを離れるのは、監督やみんなに迷惑がかかるので、それは絶対にしたくないんです」

「バカやろう! お前、何考えているんだ。いいか、親の死に目は人生に一度しかないんだぞ! 行かなきゃダメだ。それにお前、仲間を信頼していないのか!? お前は明日負けると思っているから、そんなこと言っているんだろう! 明日の試合に勝てば、もう一回お前にチャンスが回ってくるじゃないか!」

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