[高校サッカー 心を揺さぶる物語]いつも親父がいてくれた <前篇>

[高校サッカー 心を揺さぶる物語]全国で本当にあった涙の青春ストーリーを紹介します

監修・執筆 安藤隆人| Photo by Editor|シリーズ:[高校サッカー 心を揺さぶる物語]

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■運命のメンバー発表

 僕らは会議室に集められ、壇上に立つ角谷監督が一人ひとりメンバーの名前を読み上げた。前に出てきた選手に、ユニフォームが渡されていく。
 
 登録メンバー25人のうち24人までが発表された。
 僕の名前はまだ呼ばれていない。
 最後の25人目の発表の瞬間、僕は目を閉じた。

「秋田慶人!」

 僕の名前だ。
 ギリギリでメンバーに選ばれた! 壇上に上がり、背番号25のユニフォームを受け取った。

 身が引き締まる思いだった。

 その日の放課後、僕は病院に行き、親父に報告をした。

「そうか、良かったな」

 親父はそっけなかった。

 母親は「がんばったからもらえたんだよ。やっぱり監督は見ていてくれたんだよ」と喜んでくれた。

 実は親父は選手権に出場したことがあって、親子二代での選手権出場を何よりも楽しみにしていたことを、僕は母親から聞いていた。
 母親の横で、嬉しいはずなのに、それを見せないでいる親父の姿があった。
 
 このとき、ガンの告知から、1年6ヶ月がたっていた。

 親父の病状はいよいよもって悪化していて、年を越せるかどうかだと、医者から告げられていた。
 毎日お見舞いに行っていたが、会うたびに痩せ細っていく親父を見て、「いよいよなんだな……」と、僕は覚悟を決めていた。

[後編につづく]

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