[高校サッカー 心を揺さぶる物語]僕らの声は届いたか-後篇-

[高校サッカー 心を揺さぶる物語]全国で本当にあった涙の青春ストーリーを紹介します

監修・執筆 安藤隆人| Photo by Editor

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■チームスタイルを貫くべきか

円陣

 勝つためにはゴール前にどんどんボールを放り込むべきではないか。そう思ったけど、僕らのチームスタイルはパスをつないで崩していくサッカー。決してロングボールに頼った蹴るサッカーじゃない。

 みんなで積み上げてきた、自分たちのサッカーを貫くべきじゃないのか。
 キャプテンである僕は、どうするべきか迷った。
 
 でも、その答えはすぐに見つかった。ピッチにいる仲間は誰もロングボールを蹴ろうとはしていなかった。
 全力で走り、パスでボールをつないでゴールに向かっていった。

 自分たちのスタイルを捨てて勝ったところで、有村さんは喜ばない。
 言葉を交わさなくても、僕らの心は一つになっていたんだ。
 
 僕らは1点を返したものの、試合は1 -2で負けてしまった。
 だけど、初めての選手権で1勝をして、優勝候補を相手に自分たちのサッカーを最後まで貫いて得点することができた。

 僕たちのこの思いは、きっと有村さんに届いたはずだ。
 でもそれは僕らの勝手な思い込みにすぎなかったのかもしれない……。

 有村さんの意識が戻ることはなかった――。

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