【連載 第2回】流経柏・本田裕一郎監督 INTERVIEW/ユース育成の指導を考える。指導者、選手、環境はどのように変わったのか。

流通経済大学付属柏高等学校で、多くのプロ選手を育ててきた本田裕一郎監督の言葉を紹介する

元川悦子| Photo by 村井詩都 Shidu Murai

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かつて、あがきながら指導法を生んだ情熱家の存在

2016年の全国高校総体で流経柏は準優勝
Photo by 村井詩都 Shidu Murai

 千葉県高校サッカーを40年間にわたって支え、現在もピッチに立って指導を続けている伯楽・本田裕一郎監督は指摘する。

「今の若い指導者は少しカッコよくなりすぎている。本質からズレている」と。

 日本サッカーの環境は劇的に変化し、指導者が勉強する場は際限なく増えた。ただ洗練されたコーチングが拡がるポジティブな側面があるものの、指導者が貪欲にオリジナリティを追求する姿勢は減ったのかもしれない。第1回に続き、ユース年代の育成指導を考えていく。

――前回、「千葉でも30代以下の若手指導者で傑出した人材がいない」というお話がありました。その要因を本田先生はどのようにお考えですか?

「若手の指導者が少ないのは、千葉だけに限った問題ではなく、全国的な傾向だと思います。要因の一つとして考えられるのは、“指導環境”の変化でしょう。日本サッカー協会が指導者ライセンス制度を整備し、教材やレッスンなど、誰もがいい指導を受けられるようになった。それこそ素晴らしいほどです。けれども、その反面で若手指導者は “オシャレな” 練習はたくさん知っていても、“勝たせる” ことができていない。それを選手や用具、ピッチ、環境などに理由を転嫁してしまう傾向もみられる。

 昔いたのが、指導の真髄を自分であがき、もがきながら粘り強く、新たな指導法を学んび、取り入れようとした情熱家たちです。常に覇気と勢いを感じさせる指導者は今でも必要だと思います。社会環境の変化もあるのでやむを得ない部分もありますが、そこは物足りなさを感じます。

 ただチームの指導を見れば、コーチング自体は教え方や雰囲気も海外のユースとほとんど変わらない。そこで違うのは子どもたちです。海外の子どもたちは生まれながらにして自立した育ちの下で、『なぜ自分は出場できないのか』ときちんと質問する。それに指導者は的確な指導を通じて、選手に『次からはそこに気をつけよう』と思わせ、考えさせてきた。

 日本の場合は過保護のなかで育つ子どもが多く、一人でコミュニケーションを取れない選手も年々増えている。『指導者泣かせの子ども』、いわゆる個性のある “怪物” が本当に少なくなりました。子ども自身がヤンチャで自分の意思を押し出してくることがほとんどないように思います。そうした子どもの質がまるで違う。そこで海外基準の指導をしても、選手に合ったかたちでやらなければ、伸ばすのは難しいこと。自分の預かっている子どもたちの特性を見ながら、やり方を変えていくことができなければ、優れた指導者にはなれません」

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