そして、2年生になると、監督は僕をレギュラーゴールキーパーとして使ってくれた。これまでの監督の厳しい言葉の裏には、「ゴールキーパーは身長だけじゃないんだ。お前ならもっとできる」という、叱咤激励がたくさん詰まっていたことに気づいた。

　監督の期待に応えたい。
　僕のモチベーションはさらに高まった。
　
　試合でゴールを守れることが本当に嬉しかったけど、相手チームの選手からこんなことを言われたこともあった。

「ゴールキーパーがちっちゃいから、どこ打っても入るよ」

　一瞬だけ嫌な気持ちになった。でもすぐに「今に見てろよ。やってやる！」と、沸々と闘志が湧いてきた。
　
　高校2年の全国高校サッカー選手権大会の予選は、決勝まで勝ち進んだ。
　対戦相手は、僕が特待生として入れなかったあの強豪校だった。
　
　この日、試合会場のスタジアムは台風が接近していることもあり、強烈な風雨に見舞われていた。

　試合は激しい点の取り合いとなった。
　3‐3で迎えた延長後半、ロングボールが蹴り込まれた。相手フォワードの選手がそのボールに反応し、ゴール前に抜け出してきた。

「危ない!!」

　ここで点を取られるわけにはいかない。僕は迷わずゴール前から飛び出した。
　ギリギリのところでボールをクリアしたが、相手フォワードはそのまま大きく転倒した。

「ピィーーーーー」

　主審のホイッスルが鳴り響いた。