【静学スタイルの真髄】ボールを100万回蹴れ。 元サッカー部監督・井田勝通の教え!

静学は高校サッカーに初めて南米流スタイルを広めた。出身選手は三浦知良、泰年兄弟、大島僚太など、継承される静学フットボールの真髄とは。

井田勝通| Photo by 佐藤博之

スポンサーリンク

■15歳までにボールを100万回触れ!

「15歳までにボールを100万回触れ!」というのが、俺のポリシーだということは、これまでにも何度か話した。
 だから、学園では2時間の全体練習の最低でも半分はボールコントロール練習に割いてきた。
 現在、指導しているバンレオール岡部の中学生は、練習時間の90 パーセント以上、ボールに触っている。

 たとえば向かい合ったワンタッチのパス練習はやらない。3対3のボールポゼッションをやるとしても、普通はワンタッチとかツータッチでやれと言うだろうけど、俺は違う。ワンタッチパスはいらない。ドリブルしてDFを抜いてからパスを出せと口を酸っぱくして言うんだ。

 そうすると、自然とボールタッチが増えて、テクニックも身につく。ワンタッチパスというのは、ボールに触れる時間が1秒にもならないだろう。オレの発想だと、小さい時からそればかりをやっていたら、絶対にうまくならないと思う。
 それなのに、今の日本は小学生からパスサッカーばかりを追い求める傾向がある。みんな「パス、パス、パス」。ボールをつなぐ練習しかやっていない。一体、ドリブルの練習をいつやるのか。

 日本人は一人当たりのボールを触る回数がとにかく少なすぎるんだ。
 確かに、それはそれで強くなる。だけど、ワールドカップでゴール前に入って、相手の裏をかくドリブルをしたり、イマジネーション溢れるというか見ている人の度肝を抜いたりするようなプレーは絶対に生まれてこない。ワールドカップブラジル大会の日本代表がまさにそう。日本人の足りない部分をハッキリと露呈したんだ。

 小さい時はとにかくテクニックだ。ドリブルをやれ。
 それは、俺の信念でもある。
 ボールコントロールのことを、俺はよく「箸(はし)」に例える。箸を使うことは子供の時にお母さんやお父さんから教わって、最初はうまく使えないけど、だんだん自由に使えるようになる。

 サッカーも同じ理屈で考えていい。ボールを足で扱うスポーツだから、うまくなるために足で触る回数というのはすごく大事。
「他の人がボールを1万回触るなら、学園は10万回触れ」
「相手が10万回触ったら、学園は50万回、100万回触れ」
 俺はそれを口癖のように言っている。

 相手よりうまくなって、テクニックで凌駕しようと思うなら、それ以上にボールを触らなきゃならないんだ。

井田勝通(いだ・まさみち)
静岡学園サッカー部元監督。1972年、静岡学園サッカー部監督に就任し、2009年に退任するまでに高校サッカー選手権優勝や60人以上のJリーガーを輩出するなど、多くの業績を残した。技術に特化しながら”個”を伸ばす育成は”静学スタイル”として知れ渡り、プロ選手や、指導者に受け継がれている。退任後も、静岡学園中高サッカー部エキスパートアドバイザーやNPO法人岡部スポーツクラブGMを務めている。

1 2 3
PAGE TOP ↑