[高校サッカー 心を揺さぶる物語]いつも親父がいてくれた <後篇>

[高校サッカー 心を揺さぶる物語]全国で本当にあった涙の青春ストーリーの後篇を紹介します

監修・執筆 安藤隆人| Photo by Editor|シリーズ:[高校サッカー 心を揺さぶる物語]

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■今も、親父は僕の心の中にいる

 ピッチにいる選手たちも、ベンチにいる選手たちも、みんなが僕のもとに集まって
きてくれた。

「よかったな! 本当によかった!!」

 涙を流す仲間もいた。
 そして、僕はいきなり監督に抱きしめられた。

「がんばったな!! お前、本当にがんばったな!!」

 角谷監督も泣いていた。仲間たちも次々と抱きついてきた。僕は泣いていないのに、なぜか周りはみんな泣いている。

 不思議な光景だった。
 僕は監督や仲間との絆を強く感じた。
 
 僕らは2回戦で敗れ、高校サッカー生活は幕を閉じた。

 後から聞いた話だが、親父は僕を角谷監督に預けるとき、「俺のことは一切関係ないからな。お前に預けた以上は、好きにやってくれ。お前がダメだと思ったらダメだし、お前の判断に全部委ねるぞ」と言っていたらしい。

 角谷監督は3年間ずっと親友である親父との約束を守り抜いてくれた。
 
 僕を病室に残してくれたのも、親父の本音を監督が理解していたからだった。
 あのとき、親父は亡くなるのが先か、僕が到着するのが先かという状態だったそうだ。でも、僕が来たとたんに意識を取り戻したという。
 
 やっぱり親父の死に目に立ち会えてよかったと、心から思っている。会わせてくれ
た監督には、感謝の念でいっぱいだ。
 
 そして今、僕は小学校の教員をやっている。子どもたちには僕が経験したことを話したりして、「家族の大切さ」や「仲間との絆」を伝えている。

 こうして親父と同じように子どもと接していると、やっぱり僕は親父の背中を見て
育ってきたんだなと思う。

 何かに迷ったとき、親父だったらどう言うのか、どう行動するのかを考える。

 今も、親父は僕の心の中にいる。

[おわり]

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