08年1月14日、選手権決勝の勝利が教えてくれたもの。ピッチの上で選手が自立した日【高校サッカー勝利学】

「勝利にこだわることで心を鍛える」。流通経済大学付属柏高等学校で、多くのプロ選手を育ててきた本田裕一郎監督の言葉を紹介していきます。

text by 本田裕一郎 Edit by 元川悦子| Photo by Getty Images|シリーズ:【高校サッカー勝利学】

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「なんだ、藤枝ばっかりじゃん」と比嘉(祐介・ジェフユナイテッド千葉)がため息混じりに話したほどで、私自身もどうなることかと心配していました。しかし、ミーティングを終えて、選手たちがピッチに出て行った後ろ姿を見て、今日は大丈夫だと確信した。緊張感とリラックスした様子がバランスよく感じられたからです。そんな彼らに不安は一切、見て取れませんでした。

実際、キックオフしてすぐに主導権を握りました。自分たちのスピーディーなつなぎと高い個人技に自信を持っていることが、外から見ていてもよく窺うかがえました。唯一の懸念材料が藤枝のエース・河井陽介(清水エスパルス)の存在だったのですが、それも前の晩に、高円宮杯のときと同じ模造紙のスカウティングを行って話し合い、しっかり封じようと約束事を決めました。選手たちはその仕事を忠実にこなしてくれた。効率よく4得点を奪い、危なげない戦いぶりでタイムアップのときを迎えることができたのです。

2冠を獲った瞬間、私自身は思った以上に淡々としていました。長い間、憧れ続けた選手権の優勝ですから、もちろん嬉しかった。ですが、ここまでこだわり続けてきた「日本一」に手が届いたことで、自分のやり方が間違っていなかったことを確認でき、安堵したという気持ちのほうが強かったように思います。

サッカーの指導者は運を持っているだけで勝てるわけではありません。努力で運を呼び込むのです。私も3年間を通じてさまざまなトライ&エラーを繰り返しました。うまくいかずにすぐ止めたこともありました。けれども、そのトライする精神を持ち続けられたからこそ、古沼先生からのアドバイスを引き出すことができ、読んだ本から参考になることを引用できたのだと思っています。私自身もいい精神状態で2つの大会にのぞめた。やはり指導者が充実していないと選手も伸びません。そんなことをこの2冠から学びました。

高校サッカー勝利学
高校サッカー勝利学 ―“自立心”を高める選手育成法―
【著者】本田裕一郎(流通経済大柏高校サッカー部監督)
【発行】株式会社カンゼン
2009年6月23日発売
価格(税込): 1,728 円
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