ドリブラーはなぜ集うのか? 「聖和学園」が全国に残した記憶【連載:第1回】

第94回全国高校サッカー選手権大会ではピッチの選手が魅せるドリブルが話題をよんだ。宮城県の聖和学園における教えとはどのようなものか。

小林健志| Photo by Takeshi Kobayashi|シリーズ:「聖和学園」

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どんなに狭いスペースでもドリブルで進入する Photo by Takeshi Kobayashi

 特に多くの観客が集まる高校選手権では、見る者に大きな衝撃を与えた。ボールを持った選手が巧みな足技を見せ、ドリブルでスルスルと相手選手を抜いていくそのスタイル。聖和の選手が狭いスペースをドリブルで抜いていく度に、観客が「おお~」とどよめいた。そして聖和の応援団からはヒューヒューと囃し立てる声が挙がった。これまでの高校選手権とは趣の異なる「選手の技を楽しむ」というスタンドの雰囲気をつくりあげていた。

 1回戦は香川西高相手に1-1でPK戦の末勝利。2回戦は近大附属高に1-2と惜敗。高校選手権における敗退チームの涙は印象的な光景ながら、聖和学園の選手は敗れても「自分たちのサッカーを全国の舞台でやりきれました」と自分たちのスタイルを貫いた充実感に胸を張り、選手は笑顔を見せる。

 加見監督はこうも話していた。「全国大会に出るというのはたくさんの人に見てもらえるということ。それを思う存分楽しもうと乗り込んできましたから」。一様に貫いてきたドリブルサッカーを多くの人に見せることができた充実感にあふれていた。

 さらに聖和学園の選手や監督のドリブルサッカーを楽しむ姿勢は多くの人の心を動かしていた。ここから聖和学園のサッカーに感銘を受けた全国各地のドリブルサッカーがやりたい選手が集まり始め、「選手権で聖和のサッカーを見て、やりたいと思った」「体が小さくてもこのサッカーならできると思った」と部員は口々に話すのだ。

 中学生年代でドリブルや個人技にこだわる指導をしてきたチームの指導者も、聖和学園に選手を送り出すようになった。今では全国から足下の技術に長けた選手たちが集まっている。聖和学園の応援席には「記憶に残るサッカーを!」「いつ魅せるの? 今でしょ!」と掲げられた横断幕のもとで、記憶に残る、ドリブルで魅せるサッカーがどうしてもやりたい。いつしかそういう選手がこぞって集まる場になっているのだ。

 聖和学園出身で初のJリーガーとなったのは齋藤恵太(ロアッソ熊本/FW)。その他に菅井拓也・慎也(ともにJFLヴァンラーレ八戸/MF)、藤原元輝(ソニー仙台FC/MF)など大学卒業後もサッカーを続ける選手が現れ、少しずつではあるが、タレントが巣立っている。

 「記憶に残るサッカー」の誕生、発展、そして未来を追っていく。

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