【大分高校サッカー部・朴英雄監督の教え】弱くても勝てるサッカー部の監督が実践していることは、すべて「あたりまえ」のことだった

2011年全国高校サッカー選手権、県勢初のベスト4となり旋風を巻き起こした大分高校。全国大会出場を成し遂げた朴英雄監督のサッカー哲学に迫る

編集部| Photo by 株式会社内外出版社

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■「あたりまえのこと」というタイトルに込められた意味

── 「あたりまえのこと」というのはずいぶん思い切ったタイトルだと思いましたが。命名の意図は?

本書の巻頭言の朴先生の言葉から取りました。「あたりまえな言葉の中に道がある」という。実際、朴先生とサッカーの話を重ねるなかで、サッカーというゲームの本質をあらためて理解しなおすことが多々あったんです。普段からサッカーに関して「あたりまえ」だと思っていること、常識やセオリーとして理解しているつもりだったことを、一旦解体して再認識するという作業を、何度も繰り返しました。サッカーのメカニズムを解剖するような。
それって「なんだ、そんなのあたりまえじゃん」ってスルーしてしまえばそれまでのことなんですけど、敢えてそこをもう一度理解しなおすという作業を通じて、より深くサッカーの本質に迫れると思ったんです。見落とされがちですけど、「あたりまえ」という原点は本当に大事だと思います。

── サッカーのメカニズム、根源的な部分を平易な言葉で、実にわかりやすく書かれているのが印象に残りました。エピローグにもありましたが、無限に広がっていくサッカー談義をこのような形で簡潔にまとめていく作業は相当なご苦労だったと思います。

4年間にわたって先生と対話を繰り返したなかで、先生は天才だから話があちこちに飛ぶんです(笑)。それを聞きながら「これどうやってまとめようかな、まとまるのかな…」と不安になることも多かったんですが、テーマごとに分類していくと、最後にはパズルのピースがハマっていくように全体が矛盾なくまとまっていったんですね。まさにパーツから組み上げていく朴先生のチームづくりそのものだと思いました。

── 吉武博文さん(元U-16/17日本代表監督・現FC今治監督)や、大分高校OBの川崎元気さん、佐保昂兵衛選手の談話も掲載されていますね。

お三方ともわたしが以前から見てきた方々ばかりです。それぞれの立場から朴先生についてお話ししてくださいました。佐保くんの高校時代の練習にまつわるエピソードは、高校生だった頃のことが等身大で語られていて面白いですよ。

── 全国大会で朴監督の記者会見は笑いが絶えなかったのですが、取材時の面白いエピソードがあれば。

それはもう、数えきれないくらいありすぎて。本作りもサッカーと同様、とにかく妥協を許さないんです。もう編集長が印刷所に駆け込まなくてはならない時間が迫っているのに「あと5分!」「もう一回最初からざっと通して読むから!」と。大体、その前の段階で鬼のように校正して、一旦「これでOK!」となったはずなのに、次の日に会ったら「あのな、昨夜読み返してたらな、ここをこういうふうに変えたほうがいいような気がしてきてしまったんや…」って、すごく申し訳なさそうに言うんです。思わず爆笑しちゃいますよね。
まあ先生は実際のピッチでの立ち位置も「あと一歩右」とか「40センチ後ろ」というレベルで指示する人なので。本書に収録された図版も1ミリ単位で修正していて、編集者が悲鳴を上げてましたから(笑)。試合前の練習もギリギリまで準備して、そんな感じだったのかなーと思ったら、選手たちには頑張ってほしいと心から思いました(笑)。

── 本書をどんな方に読んで欲しいですか? またその方々へのメッセージがあれば。

育成年代の指導に携わる方に向けた体裁になってますけど、選手自身にもこれを読んでサッカーに関する理解を深めてもらいたいですし、サッカーのメカニズムを知ることで観戦力も上がってゲームを見るときの奥行きも増すと思うので、幅広くサッカーファンの方々にお楽しみいただければ。
一見「あたりまえ」のことが、朴先生の独特の表現力で新鮮に感じていただけるのではないかと思います。そのあたりも是非お楽しみください。

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