[高校サッカー 心を揺さぶる物語]フリーキックに魅せられて <前篇>
[高校サッカー 心を揺さぶる物語]全国で本当にあった涙の青春ストーリーを紹介します
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チームのキッカーを決める
僕がフリーキックに魅せられたのは、中学3年生のときだった。
「新チームのキッカーを決めよう」
監督の提案で、選手全員フリーキックを蹴らされたことがあった。
キッカーになることに興味はなかったけど、僕も試しにフリーキックを蹴ってみた。
すると、きれいな軌道を描いて、ボールはゴールに突き刺さった。
気持ちよかった。
それまでの僕は、何よりもパスに対してのこだわりがあった。味方フォワードの動き出しに合わせて、パス1本で相手ディフェンスを切り裂く。
僕の頭の中は、「どんなパスを出そうか」という思いに支配されていた。だけど、このときのフリーキックの快感はそれに匹敵するものだった。
チームメイトも、「お前のキックが一番よかったから、キッカーになれよ」と言ってくれた。
その言葉に乗せられて、僕はチームのキッカーを務めることになった。
試合でのフリーキックは緊張感があった。
フリーキックのときは敵も味方も観客も、みんながキッカー一人に注目する。
ボールを慎重にセットし、助走のためにボールから距離をとる。イメージを膨らませて、ゴールまでのボールの軌道を思い描く。タイミングをとって走りだし、右足を振り抜く。
そしてゴールが決まれば、大きな歓声が上がる。
僕はすっかりフリーキックの虜とりこになっていった。