スパルタ指導の弊害―理不尽な体罰がもたらした選手の生死にかかわる事故―【高校サッカー勝利学】

「勝利にこだわることで心を鍛える」。流通経済大学付属柏高等学校で、多くのプロ選手を育ててきた本田裕一郎監督の言葉を紹介していきます。

本田裕一郎 Edit by 元川悦子| Photo by

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■サッカー指導者どころか、高校教師さえ辞める覚悟をして


 2人の両親が来るまでの間、私は必死で回復を祈るしかなかった。看病しようにも何もできない。自分の無力を呪いたくなりました。そうこうしているうちに、2人は自発呼吸を取り戻し、意識も回復しました。

 親御さんが到着されたときには、ともに元気な姿に戻っていて事なきを得ましたが、そこまで追い込んだこと自体が取り返しのつかないことなのです。親御さんになんとお詫びをしたらいいかわかりませんでした。

 私はこのとき、サッカー指導者どころか、高校教師さえ辞める覚悟をしていました。

 当時の私は、選手のレベルを見ながら、トレーニングの負荷を調整することが全くできていませんでした。指導者は選手の限界値を知ったうえで、少しずつ限界を超えさせ、高いレベルに引き上げていくべき存在なのに、ただ単に追い込むことしかできなかったのです。

 しかし、この大失敗を通じて、限度を考えた練習がいかに大切かを痛感しました。この経験は何十年も経った今も忘れていませんし、トラウマになっているほどです。指導者はこういう失敗を二度と繰り返さないためにも、過去の失敗を糧に成長していかなければダメなのだと強く思います。

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