[高校サッカー 心を揺さぶる物語]いつも親父がいてくれた <前篇>

[高校サッカー 心を揺さぶる物語]全国で本当にあった涙の青春ストーリーを紹介します

監修・執筆 安藤隆人| Photo by Editor|シリーズ:[高校サッカー 心を揺さぶる物語]

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■スタンドの観客席が指定席だった日々

 年が明け、僕は高校3年生になった。
 
 親父はガンを専門に扱う病院に転院して、治療を続けていた。

 ガンの進行は予想よりは早くなかったけど、調子がいいときと悪いときが両極端で、まったくもって楽観できる状況ではなかった。

 だけどサッカー部では、僕は何が何でもしがみついていかないといけない立場の人間。少しでもサボるとすぐにBチームに落とされてしまうため、グラウンドでは親父のことを考えていられなかった。

 それくらい必死になっていた。
 
 いつしか季節は夏になり全国高校サッカー選手権大会の予選が始まった。
 
 この頃の僕はというと、Aチームに上がることすらできなくなっていた。
 監督が何を求めているのか、そういうことを考えて練習していたけれど、うまくいかない。

 原因がわからないまま、もがいていた。

 今から思うと気合いだけが空回りしていたんだと思う。

 試合でもスタメンはおろかベンチにも入れない状態で、スタンドの観客席が僕の指定席になっていた。

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