[高校サッカー 心を揺さぶる物語]いつも親父がいてくれた <後篇>
[高校サッカー 心を揺さぶる物語]全国で本当にあった涙の青春ストーリーの後篇を紹介します
スポンサーリンク■病室を後にする監督の背中に向かって、親父は叫んだ
監督は僕の腕を掴み、そのまま強引に車に乗せて、病院へと向かった。
僕と監督が病院に着いたのは、夜中の12時ごろだった。
病室に入ると、母親と叔父がいた。親父は意識がほぼない状態で、小さな唸り声を上げていた。
こんな親父の姿は見たくなかった。
来るんじゃなかった、そう思った瞬間だった。
ガバッ!
親父が突然起き上がった。「何でお前がいるんだ! 早く宿舎に戻れ!」
親父は僕に向かって叫んだ。
「せっかく息子が来たのに、なんてことを言うんだ!」
とっさに角谷監督が親父に言った。
「角谷か!?」
親父は監督の存在に気付くと、動かないはずの両腕を動かし、手で三角形を作った。
「いいか、これが見えるか。お前らはこの三角形の底辺にいるんだ。そこからお前らは勝ち上がっていかないといけないんだぞ。わかるか!?」
手を動かしていることも、しゃべっていることさえも、奇跡のような状態だった。
「わかったよ。十分にわかった……」
角谷監督は泣きそうな表情になっていた。そして、僕を見つめながら言った。
「おそらく今日が峠だろうから、お前はここに残るんだ」
僕は、力なくうなずくしかなかった。
「角谷! 慶人を連れて帰れ!!」
病室を後にする監督の背中に向かって、親父は叫んでいた。