【静学スタイルの真髄】闘争心や負けじ魂のない指導者は練習を機械的にやっているだけ。元サッカー部監督・井田勝通の教え!

静学出身の大島僚太や長谷川竜也など、現在のプレーヤーに継承される静学フットボールの真髄とは何か。

井田勝通| Photo by Editor|シリーズ:【静学スタイルの真髄】

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■心のスイッチに火をつけるためには、やっぱり情熱だ

 サッカー王国と言われた静岡には、藤枝東の黄金期を築いた長池実先生、清水の少年サッカーの土台を作った堀田(哲爾)さん、清水東の勝沢(要)先生、清水商業(現清水桜が丘、以下清商)の大滝(雅良)、東海大一(現東海大翔洋)の望月(保次)といったように、情熱と個性のある指導者が数多くいた。そういう指導者が切磋琢磨しあって、いい選手を育て、強いチームを作ってきた。だからこそ、静岡は日本のサッカーをリードできたんだ。

 だけど、最近の中高年代を見ると、自分の生活を犠牲にしてサッカーに全てを注ごうと考える人、ある意味「異端児」とも言うべき指導者は見当たらない。みんなサラリーマン的だ。

 それは学校の先生だけじゃなくて、Jクラブやクラブチームで教えているプロコーチもそう。闘争心や負けじ魂といった熱い気持ちのない指導者はパス・ドリブル・シュートと練習を機械的にやっているだけ。そんなスタンスでは、個性を伸ばす、ひらめきを育てるなんてレベルに達するはずがない。

 もっと熱くなって子供たちに向き合わないと、熱は伝わらないもんなんだ。
 エビの天ぷらだって、170~180度の油で2~3分揚げるとカラッとおいしく仕上がるけど、40~50度の油に10分入れたってグニャグニャになるだけだ。

 その例と同じで、指導者も170~180度の熱で向き合わないと、子供たちは燃えてこない。情熱というのは、何よりも大切な要素だと俺は強く言いたい。

 自分が今、教えている岡部のクラブでは、しばしば子供たちに裸足でリフティングボールを蹴らせている。足裏でボールを扱えればプレーの幅が広がるし、何と言ってもボールタッチの繊細な感覚が養われる。子供たちも目を輝かせて取り組んでいる。1時間半の全体練習が終わっても、「コーチ、もっとやりたい」と言って、帰ろうとしないくらいだ。そこまで子供には探求心や好奇心というのがあるんだから、指導者が熱意を持って向き合えば、もっと上を目指すし、貪欲に向上しようとする。

 心のスイッチに火をつけるためには、やっぱり情熱だ。
 俺はそのことを、口を酸っぱくして、言っておきたい。

井田勝通(いだ・まさみち)
静岡学園サッカー部元監督。1972年、静岡学園サッカー部監督に就任し、2009年に退任するまでに高校サッカー選手権優勝や60人以上のJリーガーを輩出するなど、多くの業績を残した。技術に特化しながら”個”を伸ばす育成は”静学スタイル”として知れ渡り、プロ選手や、指導者に受け継がれている。退任後も、静岡学園中高サッカー部エキスパートアドバイザーやNPO法人岡部スポーツクラブGMを務めている。

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