[高校サッカー 心を揺さぶる物語]僕らの声は届いたか-前篇-
[高校サッカー 心を揺さぶる物語]全国で本当にあった涙の青春ストーリーを紹介します
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■それは僕にとっての希望だった
だけど僕には、有村さんが病人には見えなかった。顔色も悪くなく、ただ静かに眠っているだけで、今すぐにでも起き上がってきそうな気がした。
不思議な感覚だった。
「おい、有村の手を握って話しかけてみな」
監督にそう言われると、僕は手を握り、有村さんに向かって話し始めた。
「有村さん、僕です。わかりますか?」
そこから選手権への意気込み、有村さんへの思いを、僕は言葉にして語りかけた。
ピクッと有村さんの手が動いた。
「もしかすると、聞こえているのかもしれない」
それは僕にとっての希望だった。
僕たちが勝ち上がっていけば、有村さんの意識が戻るんじゃないか。
そういう思いになっていた。
「選手権の僕らのプレーを見ていてください」
最後にそう声をかけて病室を後にした。
それから仲間たちは次々と、ベッドの上で眠ったままの有村さんへ言葉を掛けていった。