[高校サッカー 心を揺さぶる物語]僕らの声は届いたか-前篇-

[高校サッカー 心を揺さぶる物語]全国で本当にあった涙の青春ストーリーを紹介します

監修・執筆 安藤隆人| Photo by Editor|シリーズ:[高校サッカー 心を揺さぶる物語]

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■チームのトレーナー

競り合い

「トレーナーの有村が倒れた!」

 監督からチームのキャプテンである僕に、その事実が告げられたのは、高校3年の11月のことだった。
 僕たちは初の選手権出場を決めて、最後の大舞台に向けて、練習に打ち込んでいた。
 
 有村さんは僕らのサッカー部に帯同しているトレーナーコーチだ。
 僕らと年がそんなに離れてないこともあって、チームではお兄さん的存在だった。

 サッカーの話だけじゃなく、プライベートな話も気軽に相談できて、頼れる良き理解者でもあった。
 遠征についてきてくれたときは、自由時間などに率先して一発芸をして僕らを笑わせてくれた。

 もちろん選手権予選も一緒に戦ってくれた。

 僕たちの体をケアしてくれて、いつも万全の状態で試合に臨ませてくれた。
 そして、ベンチから、僕たちの快進撃を見守ってくれていた。
 
 有村さんの病気は原因不明だった。
 本業である接骨院での仕事が終わったとたん、そのまま倒れてしまい、意識が戻らない状態が続いているということだった。
 
 監督からは、有村さんがどの病院に入院しているのか、そういった情報は一切教えてもらえなかった。
 監督も状況を計りかねていたようだった。選手権を前にして、僕らを動揺させないための気遣いもあったんだと思う。

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