[高校サッカー 心を揺さぶる物語]いつも親父がいてくれた <前篇>

[高校サッカー 心を揺さぶる物語]全国で本当にあった涙の青春ストーリーを紹介します

監修・執筆 安藤隆人| Photo by Editor|シリーズ:[高校サッカー 心を揺さぶる物語]

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■基礎を教え込まれた

開会式

 親父が末期ガンだと知ったのは、高校2年の夏前のことだった――。
 
 僕のサッカー人生にはいつも親父がいた。

 親父は小学生のサッカークラブの監督を務めていて、僕はそこでサッカーを始めた。

 親父はサッカーに対して情熱的で、家に帰ってからも個人練習があった。

「インサイドキックはこう蹴るんだ!」
「周りを見ながらプレーするんだ!」
「トラップが何よりも大事だ!」

 親父からサッカーの基礎を徹底して教え込まれた。
 
 中学のサッカー部では、今までの親父との練習の成果もあって、チームの中心としてプレーしていた。

 高校は、親父に勧められてセレクションを受けて、地元の強豪校に入った。

 親父のことを正直うっとうしいなぁと思うこともあったけど、サッカーについては親父のアドバイスを頼りにしていたし、時には熱いサッカー談議を交わすこともあった。

 高校サッカー部を率いる角谷監督は、地元では厳格な指導者として知られていた。

 実は、角谷監督は僕の親父の親友でもあった。2人は同級生で、高校時代は選抜チームでコンビを組んでいたらしい。

 つまり、監督にしてみれば、僕は親友の息子にあたるわけだ。
 でも、だからといって優遇されることはまったくなくて、毎日厳しい指導が続いた。
 
 練習ではレベルによって、A、Bとチーム分けされていた。
 1年のときはAチームなんて程遠い状態。周りの選手のレベルも高くて、必死に食らついていくだけで精いっぱいだった。それでも、2年になると必死にやってきたことが評価されたのか、Aチームで練習することもあった。

「絶対にレギュラーを取ってやる!!」

 気合いを入れてサッカーに打ち込む日々。
 そのときだった――。親父が病気であることを告げられたのは。

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