最年少・久保建英が見せた老獪さ。本人は不満足も卓越したセンスで攻撃陣けん引【U-16日本代表】

鮮やかなFKを決め、後半にもエリア内を切り裂いてゴール。久保建英本人の納得いくプレーではなかったようだが、チーム最年少からは老獪さも感じるパフォーマンスだった

元川悦子| Photo by 編集部

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■「狙い通り」。先制点となったFK弾を決めた久保

大勝も反省の弁を述べた久保建英

「ベトナムさんは近年、ホントに力つけてきている。もともとスピード、アジテリィに長けていて、テクニカルな選手も多い。非常にケアしないといけないなと感じています」

 16日のAFC・U-16選手権(インド)開幕前に、森山佳郎監督がこう強調した通り、若き日本は大いなる警戒心を持って、初戦・ベトナム戦に挑んだ。

 実際、序盤のベトナムは8番のグエン・チャン・ベトコンを軸に積極的な仕掛けを見せ、ファーストシュートも放ってきた。彼らの勢いを日本選手たちも少なからず感じたことだろう。その流れにいち早く歯止めをかけたのが、前半16分の久保建英(FC東京U-18)の直接FK弾だった。

「試合前に『相手の壁が飛ばないから、あんまりコースを狙いすぎずにしっかり強くボール蹴れば入るよ』っていうのをアドバイスもらっていた」と本人が明かしたように、小柄な15歳のレフティが冷静に壁の位置を見極めながら左足を振り抜いた瞬間、シュートは美しい弧を描いてゴール右隅に突き刺さった。

「狙い通りのFKだったかなと思います。キレイに決まったんで、なんかスーッとしたというか、緊張が取れたかなという感じがしました」と大仕事を果たした久保は安堵感を吐露した。

 重圧のかかるアジア最終予選の初戦で、チーム最年少の選手がここまでの落ち着きと強心臓ぶりを前面に押し出せば、チーム全体が刺激を受けて当然だ。年長のアタッカー陣は負けじ魂を燃やしたに違いない。そして、この一撃が、その後の凄まじいゴールラッシュにつながった。

 U-17W杯のかかる大舞台でいきなり2発という華々しい一歩を踏み出した久保。だが、流れの中のプレーを見ると、パスを相手にカットされたり、思うようにボールを持てなかったり、菅原との右サイドの連携をあまり出せなかったりと、不完全燃焼感も残ったはず。

 欲を言えば、彼はもっと攻守両面で顔を出す回数が多くしてもいい。2トップの宮代、山田とのコンビネーションも改善の余地はある。そのあたりを詰めていくことが、さらなる輝きを放つためのポイントになってくる。

 「今日はあんまりボールが足につかなくて、納得いくプレーではなかったんですけど、ゴールに絡めるプレーは何度か出せたとので、そこはよかったかなと思います。自分自身としては、もうちょっと余裕を持ってプレーしたいなと。

 今回は初戦だったんですけど、次はもう言い訳できないんで、もっと余裕を持ってしっかりプレーしたいと思います」と本人も自戒を込めてこう語っていた。
 
 試合終了直前に接触プレーで痛めた右でん部は問題ないという。タンカで退場することになり、見る者をハラハラさせたが、ダメージが今後に響くようなことはなさそうだ。

 日本は19日に第2戦・キルギス戦を迎えるが、そのキルギスがオーストラリアを1-0で下したことから、次戦が1位通過を左右する重要なゲームになる。久保ら攻撃陣はこの勢いを持続するとともに、冷静な試合運びも求められる。

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