JFAのYouth & Development Programmeによる『NIKE ACADEMY』トレーニングメソッド実施レポート

『NIKE ACADEMY』のメソッドに基づいたトレーニングがインターハイ王者の市立船橋高にむけて、練習場である法典公園(グラスポ)で実践・披露された

舩木渉| Photo by 舩木渉 Wataru Funaki

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瞬時に合わせるためのコミュニケーション

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指導に聞き入る市立船橋高の選手たち Photo by 舩木渉 Wataru Funaki

 攻撃側は1人多いため、フリーな味方にパスするのがセオリー。しかしそれでもオリベイラ氏は再三積極的にシュートすることを求めた。難しい姿勢でも、自信を持って足を振り切ることがゴールにつながる。フィニッシュの局面で勇気を見せ、ゴールを奪うための素早い判断が重要になるというのだ。このメニューでは攻撃側はゴールを奪えなければ、すぐに守備側に回らなければならなかった。ここでは誰が抜けるのか、守備から攻撃に切り替える際に誰が入るのか、そういった周囲の状況を正しく見極め、迅速に決断を下す的確な判断力も要求されていた。

 3つ目のメニューである4対4でも、勝負へのこだわりとプレーの連続性が重要なポイントになる。このゲームでは両サイドとゴール脇にフリーマンが合計4人配置され、ボールが外に出にくくなっている。つまりプレーが切れる回数が少なく、シュートを打てる回数が増えるのだ。

 これまでのメニューで意識してきた「②インテリジェンス」や「③ポジショニング」、「⑥コンフィデンス」といった様々な要素を複合的に発揮しなければならない。フリーマンをいかに使うか、ゴールに近づくためどう動くか、ボールを前に運ぶために正しい選択ができるか、たくさんのチャンスをしっかりと生かせるか、そういったことが試された。

 ゴールも1種類だけでなく、片方は“普通のゴール”で、もう片方は“両サイドにコーンで作られた小さなゴール”が2つ配置されている。つまり“普通のゴール”を守った側が、攻撃に転じる時にサイドへ展開しながらのビルドアップを意識するためのオーガナイズである。

 ビルドアップの場面でもより前へボールを運び、次のプレーに繋げられるサイドを選んでパスを展開する判断力が求められる。もちろんフリーマンを使いながら、味方と連携しながら、あらゆる方法でゴールに近づこうとする。しかし4対4だと最初は選手たちの意識があまり噛み合わない。

 するとオリベイラ氏は、同じグループで数分間話し合う時間を設けた。ここで⑤コミュニケーションを取り、グループ内の意識を統一させる狙いがあった。練習に参加していた杉岡大暉は「話し合い」の場面を振り返ってこう語る「ボールがどう動いたら全員がどう動くというのを確認するだけだったので、お互いの意図を伝える場にはならなかった」。日頃のコミュニケーションからどのように積極的に自分のやりたいプレーとして主張し、それらをすり合わせてグループの形として昇華させられるか。これらを瞬時に通い合わせるのはトップレベルを目指すからこそ必要な部分といえる。

 どんなメニュー・ゲームにおいても途中で練習を止め「ここまでのゴール(ポイント)数を覚えているか?」と問いかける。選手たちは正確に答えられないときには「それでは意味がない」と語る。練習後には「勝ち・負けのせめぎあいのところで自信を持って動いてほしかった」と述べ、いつ何時も勝敗を意識することで、実際の試合で勝利へのこだわりがより強くなると考えているようだった。

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