【静学スタイルの真髄】ボールを100万回蹴れ。 元サッカー部監督・井田勝通の教え!
静学は高校サッカーに初めて南米流スタイルを広めた。出身選手は三浦知良、泰年兄弟、大島僚太など、継承される静学フットボールの真髄とは。
スポンサーリンク■練習のための練習はするな、いつも試合をイメージさせろ!
2015年、第93回高校サッカー選手権大会に出場。写真は準々決勝戦。
うまくなるためには、多くの練習を積み重ねなけれなならない。それはどの指導者も選手も考える、当たり前のことだ。
俺もそういう信念を持っているから、学園で指導を始めた頃には1日四部練習もやったし、選手権準優勝の後、勝てなくなった後からは早朝練習も取り入れた。まだ夜も明けていない朝5時から、学園のグラウンドや草薙総合運動公園でリフティングやフェイントの練習をする選手たちの姿は、地元でも有名だった。
俺自身も「ボールを100万回蹴れ」がモットーだったから、どんなに前の晩、深酒しても、必ず朝起きてグラウンドへ行った。照明が使えない時には自分の車のヘッドライドをつけて、その明かりを頼りに子供たちにボールを蹴らせたもんだ。その練習量の多さは半端ではなかったと思う。
ただ、練習というのは単に長時間やればいいというものではない。
それに改めて、気づかせてくれたのが、将棋の廣津久雄九段。2008年に亡くなってしまったが、人格的にも素晴らしい人物だった。
その廣津先生に以前、こんな質問をしたことがある。
「羽生(善治=永世名人)はなぜこんなに強いんですか?」
これに対する回答は斬新なものだった。
「練習のための練習をしてないからだ」と。
当時は80年代後半。羽生がまだ18歳くらいで、最初の旋風を巻き起こしていた頃だ。そんな若者にとって「練習=試合」というのは、驚きに値する事実だった。それが自分にボールを奪われることもなくなる。
ドリブルを軸にして、ワン・ツーやトライアングルパスなど応用力を高めていけば、華麗で理想的なフットボールに近づいていく。
1対1で抜くことを手始めに、2対1、3対2と人数を増やし、より実践的な内容にレベルアップさせていけば、選手たちも楽しいサッカーを好きになるだろう。最初は誰もがうまくはいかないから、無理をさせずに横パス、バックパスを使わせてもいいが、徐々に実戦を想定した内容に変化させていくべき。それを本当の試合の場で成功させられれば、選手たちは攻撃サッカーの魅力の虜になるはずだ。
浦和南と選手権史上に残る名勝負を演じた選手たちも、みんなそうだった。
ボールをキープし、ドリブルで突破することを覚えることは、サッカーの醍醐味を知るための必須条件。そう俺は確信している。