【高校サッカー選手権ストーリー】富山第一FW・本村比呂が掲げた父への誓い

高校サッカー選手権における富山第一FW・本村比呂のストーリーを伝える

舩木渉| Photo by Editor

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富山第一

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 サッカーには勝者と敗者が存在する。ただそれは単純な対立構造ではなく、喜び、安堵、悲しみ、怒り、悔しさといった感情が複雑に絡み合って様々なドラマを生む。ロッカールームを出て取材陣のもとへ歩み寄った1人の選手は、目にいっぱいの涙をためて、体の奥底から絞り出すように言葉を紡いだ。

「ハーフタイムに『母さんに全国優勝の景色を見せたいから何としても勝たせてくれ』ってお願いしたんですけど、まだ自分の力不足で、『まだ自分に甘いな』って父さんは思っていると思います』

 その男は敗者だった。第95回全国高校サッカー選手権の3回戦、東海大仰星に敗れた富山第一のエースストライカー・本村比呂(3年)は他の選手たちとは違った思いを胸に戦っていた。

 本村は高校1年の冬に最愛の父親を亡くしている。小さい頃から尊敬していた父・昌夫さんは突然の交通事故でこの世を去った。

 富山第一には中学時代をクラブチームで過ごした選手が多い。一方、本村は父が3年間単身赴任で家を離れていた影響もあり、クラブチームでのプレーを諦めざるをえなかった。同じようにサッカーをする兄がおり、母だけでは自宅から離れた場所で行われる練習への送迎などができないことが理由だった。

 それでも決して強豪ではない地元の中学校のサッカー部で活躍し、「高校だけは富山第一に行きたい」という思いで通学に自宅から片道2時間近くかかる高校を選んで進学した。しかし、順風満帆だったはずの高校1年の12月、本村を悲劇が襲う。

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