練習相手のチームメイトにも『もっときてくれ！』と激しいプレーを要求するようになった。高い強度のなかでもしっかりコントロールして、つぎのプレーに繋げることを常に心がけてきた。そのストイックさが中村をチームの柱へと引き上げた。だから主将としても、チームが完封負けを食らって打ちのめされたままで選手権を終わらせるわけにはいかなかった。思いは、ゴールキーパー・石井涼平にとっても同じだっただろう。

「2年生の夏の試合で、監督の言っていることも耳に入らないくらいにボールに夢中になってしまい、2失点したことがあります。そのたった1試合で『コーチングもできないキーパーはいらない』って、レギュラーから一番下のチームへと一気に落とされたんです。すごい苦しかった。本当にメンタルが腐りかけました。けど、もうスタメンを取るしかないなって、あとはとにかくがむしゃらでしたね」

　そうやって這い上がってきたゴールキーパーが最後尾からフィールドプレーヤーを鼓舞するのだ。チームが最後まで粘り切ることのできる勝ちたいと思える気持ちを取り戻すのに1週間あれば十分だったのではないだろうか。そして臨んだ選手権。だから相手チームに生じた一瞬の隙を見逃すわけはなかった。それが中村が口にした「メンタル」という部分だと思うのだ。

「今回（藤沢清流戦）は失点しましたが、次は無失点試合ができるようにがんばりたいと思います」

　石井涼平は力強く話しを締めくくった。9月18日（日曜日）には桐蔭学園とベスト16をかけて戦う。麻布大附属にとってはアウェイとなる横浜市青葉区の桐蔭学園高校にて午前9時30分にキックオフ。中村万優も「1年生のときに練習試合で負けているのでリベンジマッチです」と決意を新たにする。面白い試合を見せてくれそうだ。

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